
火星にはかつて液体の水が流れていた痕跡があったと言われている。地表の下には氷があるらしいこともわかっていたのだが、実際にあったのだ。しかも広範囲に。
赤い土砂の下には厚さ90メートルの氷床が広がっていた。それは火星に青黒い色彩を与えているそうだ。
8ヶ所の急斜面の下には分厚い氷が隠されていることが判明
『Science』に掲載されたアメリカ地質調査所宇宙地質学科センターのコリン・ダンダス博士らによる論文によると、火星の8ヶ所で発見された「急斜面(scarp)」という地質学的特徴の解析から、地表の下に分厚い氷が隠されていることが判明した。
火星に氷があること自体は特に新しいニュースではない。2001年、NASAの火星探査機マーズ・オデッセイは火星に到着し、氷の存在を示す化学的サインがないかどうか調査を開始。
ガンマ線分光計によって水素が発見され、ここから地表の3分の1に膨大な量の氷が存在することが明らかになった。
しかしこの時の調査では、氷の深さや組成までは分からなかった。

クレーターの中に純粋な氷の存在が明らかに
ダンダス博士のチームは、より新しいマーズ・リコネッサンス・オービーターが実施した高解像度の地表マッピングを用いて、小さなクレーターの中に露出した氷、氷河、氷床があることを突き止めた。
高解像度データのおかげで、氷に起因する地形の理解が大幅に進んだのだ。
研究には参加していない英オープン大学のマット・バルム博士によると、重要なのはマッピングされた画像に青みがかかっていることだという。

この事実は、底層が赤い土とは異なる組成をしていることを示している。氷床で水と土壌が混ざり合っている可能性は低い。
論文の結論が正しければ、ほとんど純粋な氷があることになる。
急斜面は火星の中緯度に沿っているため、極から流れてきた氷河である可能性はないと思われる。論文では、火星に雪が大量に降り積もったことで氷床が形成されたのではないかと推測されている。
地表の霜である可能性も考慮しましたが、氷のサインは夏でも消えないと、ダンダス博士は語る。

地下の氷の構造が不安定になり膨張したことで露出
急斜面は「昇華」というプロセスによって形成された。露出した氷は気体に直接変化し、その上にあった岩石や塵は突如として基盤を喪失する。
このように地下の氷の構造が不安定になり、膨張したことで露出したのである。急斜面は驚くほど急峻で、地球氷河の氷堆石に似ているだろうと推測される。

火星での水源は確保できたかも?
火星の中緯度は寒く、赤道付近よりも過酷な環境である。しかしロボット探査機ならば近寄ることが可能だ。
もし火星に人類が定住するのなら、水源は確保できたことになるのかもしれない。あるいは先行して火星に行く宇宙飛行士たちが喉の渇きを癒すため、ハンマー片手に急斜面に赴くようなこともあるかもしれない。
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