
東京大学などの研究チームは、土星の衛星に生命の生息が可能な環境を発見したとの研究成果を発表した。
土星の衛星エンセラダスは、内部に液体の地下海を持ち、海水がプリュームと呼ばれる間欠泉として宇宙に噴出している。しかし、地下海の具体的な環境の特定は行われておらず、生命の生息可能性に関する議論もできなかった。
東京大学・大学院新領域創成科学研究科の関根康人准教授、海洋研究開発機構・海洋地球生命史研究分野の渋谷岳造研究員らは、日欧米による探査と実験によって、エンセラダスの地下海に海底熱水環境が存在することを明らかにした。
欧米チームは、カッシーニ探査機のデータから、プリュームとして放出される海水中にナノシリカ粒子が含まれていることを明らかにした。日本チームは、エンセラダス内部の環境を再現する実験で、ナノシリカ粒子が生成するためには岩石からなるエンセラダスのコアと地下海の海水が、現在も90度を超える高温で反応していることを示した。

初期の地球の海底熱水噴出孔は、生命誕生の場の有力候補で、現在もそこで得られる熱エネルギーを使って微生物が生息している。今回の成果は、エンセラダスに液体の水、有機物、エネルギーという、生命に必須の3大要素が、現在でも存在することを示す。
35億年前の火星地表面には、液体の水が存在していたことが確実視されているが、現在の火星は寒冷で乾燥しており、生命を育みうる環境なのか分かっていない。地球以外で生命を育みうる環境が現存することが実証されたのは今回のエンセラダスが初めで、今回の成果は「生きた地球外生命の発見」という自然科学における究極のゴールに迫る。
これまで火星に集中していた太陽系生命探査は、エンセラダスという新たな候補天体を得て、今後大きな広がりを見せることが期待されるとしている。
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